時価総額1兆円。『サントリー食品インターナショナルBF=Suntory Beverage & Food Limited』が今月3日、東京証券取引所に上場しました。知名度は高く、世間は同社の上場に関心を示します。その株価と同じくらい注目を集めているのがBF社長『鳥井信宏(47)』の出世街道の行方。親会社『サントリーホールディングス・HD』社長、『佐治信忠(67)』の後継者の最右翼とみられるからです。
3日午後2時10分。東証のイベントホール『東証Arrows』に上場の鐘が鳴り響きました。お決まりのセレモニーですが、サントリーグループにとっては重大な意味を持ちます。木槌を手にするのはBF社長・鳥井信宏。グループ総師候補のお披露目の意味もあるからです。HDの佐治社長は姿を見せませんでした。鳥井信宏は、サントリー創業者『鳥井信治郎』の直系のひ孫。同社は鳥井家と婿養子に行った佐治家が交互に社長を輩出する一族企業として有名です。この経験則からすると、HD社長の佐治信忠の後継に最も近い存在に。HDのトップになれば、5代目社長となります。
現実味を帯びてきたのは、今年2月、大阪で開かれたHDの2012年12月期の決算発表での信忠の発言。『今年で68歳になる。来年、ここで発表をさせていただくのが多分最後になると思う』と、事実上の社長交代を表明。洋酒が祖業であるサントリー。英国の酒造会社などの多くが家業として受け継がれているのを見ており、家業を守ることの大切さを知るのが鳥井・佐治両家です。2010年に破談となったキリンHDとの統合交渉でも、統合比率を巡り、サントリー創業家が統合会社の筆頭株主にならないことが原因だと言われました。
サントリーのトップにはそれぞれ社史に刻む功績があります。初代鳥井信治郎は初の国産ウイスキーを世に送り出し、2代目、信忠の父、佐治敬三はビール事業に参入しました。だからこそ、信忠は自身の後継者にふさわしい、成功体験を早く味合わせようと信宏をその舞台に放り込みました。高級ビールの位置づけの『ザ・プレミアム・モルツ―プレモル』のマーケティング戦略を立案する責任者に信宏を据えたのです。06年6月。肩書きはビール事業部プレミアム戦略部長。40歳でした。
当時社内外から聞こえてくるのは、その号令一下のすごさ。『銀座の店をひっくり返せ』。東京・銀座など高級飲食店に営業攻勢をかけ、プレモルの売り込みに奔走。ライバル企業からの切り替えに止まらず、既存の『モルツ』も犠牲にして、プレモル一色に染めていきました。それまで信宏に対するイメージが『きさくな若者』だっただけに一気にその名がとどろきました。そして08年にビール事業開始以来46年目にして初めて黒字化。成功体験を築きました。
サントリーは20年以上も前から『株式公開に向けた頭の体操』はずっと続けていました。しかし、創業家の影響力を削がれる上場は難しく、妙案がありませんでした。今回、その難題を解きほぐしたのも信宏でした。親会社のHDを非上場のまま、子会社のBFを上場させることを昨年末にサントリー側から聞かされた証券会社の役員は『こんなやり方があったとは』と舌を巻きました。上場を懸念していた東証を納得させた交渉力も持ち合わせて。
上場が成功裏に終わり、公募増資で得た4,000億円弱の資金の使途にも関心が及びます。それは次なる海外の企業買収です。M’&Aの陣頭指揮をとってきたのは、HD社長の信忠でした。これからはその役回りは信宏になると見られます。
20年ほど前、サントリーの社長だった佐治敬三は記者から上場の質問を受けると決まってこう受け答えしました。『公開(後悔)先に立たず』と。信宏はこんな言葉は聞きたくないでしょう。上場の成功と今後のM&Aの果実。信宏がどれだけの成功体験を積めるかにかかっています。なお、上場初値は3,120円、市場から取得した資金は3,880億円という巨額に上りました。
佐治敬三さんという卓越したトップは、サントリーを単なる醸造会社から、サントリーホール、サントリー美術館を持つ、『文化の香りのサントリー』を育て上げ、その功績は偉大です。が、それらを受け継いだ二世、三世もまた偉大な事業展開をしようとしています。素晴らしい、サントリーではあります。(^.^)
★『珍説、拉致問題』。日本維新の会の石原慎太郎共同代表は12日夕、北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんについて『非常に日本的な美人だから、強引に結婚させられて子どもまで産まされた。誰か偉い人のお妾さんになっているに違いない』と述べました。横浜市内の街頭演説で。まさに珍説。支持者の拡大を狙ったものか、本当にバカな発言なのか、未だ真相は闇。
★神戸から川崎に移籍した大久保の活躍は先般触れました。が、それにしても凄い変身ぶり。言い方は悪いですが、神戸時代の大久保は疫病神。PKは外すは、チャンスに弱いは。その大久保が、川崎では善玉に。土曜日の浦和戦でもPKを決め、J1・11人目となる通算100得点を達成。このPKも、キック直前にフェイントを見せる余裕。大久保、野沢を移籍放出した神戸はJ2で2位を堅持。かつての神戸より強くなっているのは因縁の不思議でしょう。
■今日の画像は、『友禅柄のポールが輝く嵐電・嵐山駅の「キモノフォレスト」』と、『チェリーセージ』『シナモンゼラニウム』『赤いバラ』です。ゼラニウムは本当に種類が多いのですねえ、名前を探すのに一苦労です。(^.^) (昨日のアップからのアクセス件数は、273件でした)