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Channel: Freeman 雑記帳・広島
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『ストリーキング余話―コロラド大の大ストリーキング記録より』

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1974年の流行は、ノースカロライナ州あたりで始まった。数人の男女学生が裸で、驚く人々を文字通り尻目に、真昼間の繁華街を走り抜けたり、ラッシュアワーの道路で渋滞した車の間をぬって横切ったり、女学校の廊下を全速で走り回ったりした。これらがニュースの話題になると、またたく間にアメリカ中の大学に伝染病のように広がり、奇行も混ざって大ブームに。

そしていくつかの大学が、ストリークの参加者数の世界記録を競うに至った。3月中旬には私の勤めるコロラド大学が、それまでの記録である1,000人を破り、ギネスを書き換えるために立ち上がった。学生新聞には全学生に参加を呼びかける広告が連日登場。人々の関心を引くため、数人によるストリークが何度か行われた。機運は次第に高まって行った。

当日は、午後9時に寮の中庭に集合することになっていた。世界記録をこの目で見ようと、物好きな人々が8時頃から続々と大学にやってきた。どの人も、酔狂なことに氷点下の寒さの中を、厚いオーバーを着込んで、見物にやって来たのだ。定刻の9時少し前になると中庭を取り囲んでいる幾つかの寮から一斉に男女が走り出てきて、全員集合した。

リーダーらしき男が玄関の上に立ち上がって短い演説をし、最後に何か叫んだと思うと、至る所から、ときの声が湧き上がり、それと同時にグラウンドの方に向かって走り始めた。皆、興奮したように、口々に何か叫んでいる。見物の群衆も引きずられるようにその後を追って走り出した。広いグラウンドに出るとそこには歴史的光景を目撃、記録しようと、各地から集まった報道陣がカメラの列を敷いていた。

明るく照らされた照明に、裸体が乱舞する。彼らはグラウンドでいくつかのグループに分かれた後、そのうちの一つがフットボール場に向かって走り出した。私は大した理由もなくこのグループの後を追いかけた。少し遅れて着いてみると、彼らはフィールドを一周してゴールポストの下に集まっていた。かなり激しく走ったのだろう、白い息が、短い周期で強く吐き出される。

初めの緊張感はなくなり、笑い声が随所に起こる。中にはカメラの前で仲良くポーズを取っている恋人同士もいて和気藹々。観衆の中には扇動されたのか、ストリークに加わる者もちらほら。周囲に、あまりに裸が多いと、洋服を着ているのが罪悪であるかのような妙な気分になってくるものだ。彼らはひとしきりシュプレヒコールなどで気勢を上げると再びグラウンドに走って行った。

主催した学生の発表によると合計1,500人の参加があったそうで、キャンパスの至る所が裸だらけだった。披露困憊してアパートに戻ってきたが、まだ酔ったような気分だった。そして、ふと自分がストリークしたいと強く感じているのに気付いた。今、この時を逃したら生涯チャンスはやって来るまい、と思うやいなや裸になって部屋を飛び出した。廊下を通り、階段を下りて外に出てみると思ったほど寒くない。

道路の方に目をやると人はもちろん車も通らない。階下で飼っているやかましい子犬に、こんな格好で吠えられたらどうしようと心配していたが、もう眠っている様子だ。棟を一周すると勇気を出して道路の中央に走り出た。ところが誰か遠くから声をかけてくる者がいる。仰天した。そして急に不安になった。恐々と声の方を探すと暗闇の中にどうやら男女らしい二つの影が見えて、それが私の方に勢いよく走ってきた。

彼らが道路沿いの水銀灯で明るくなった部分に入るや、たまげてしまった。運動靴とソックスしか身にまとっていなかったのである。二人とも若い。『やあ、今晩は。勇気がなかったが、あんたがやり始めたのを見て、夢中で飛び出して来たんだ。僕がディックで彼女がキャッシー』。これを聞いて私は安堵の胸をなで下ろしたが、格好が格好だし、何も道路の真ん中で、しかも大声で自己紹介までしなくてもよいのに、と重いながらキョトンとしていると、予期した通りに、『僕たちも一緒にストリークしていいかい』と言った。いいも悪いもない。『もちろんさ。僕はデミアン』。

三人は並んで走り始めた。私が戸外に出て3分と経たないうちに参加者が現れたことが面白かった。一周すると、もやもやしていた気分が一挙に吹き飛んでしまったようだった。部屋に戻って、温かいシャワーを浴びてから窓の外を見ると、二人はブランコに揺れながら、まだ遊んでいた。この道路をストリークしたのは自分が世界で初めてだと思うと大いに誇らしく思った。
  (参考: 藤原正彦著『若い数学者のアメリカ』 エッセイストクラブ賞受賞・新潮文庫)

まさか、エッセイストクラブ賞を貰った書に、世界記録を目指すコロンビア大学の『ストリーキング』が載っているとは思いませんでした。しかし、その興味本位のいやらしさをさらっと書き流し、裸で走る面白さ、を表現したこの章は大変面白かったです。数学者がこれほどの文章を書くのにも驚きです。

『藤原正彦』を知ったのは、『阿川佐和子』のエッセイで、イギリスに初めて行く際、父阿川弘之から、藤原正彦のイギリス留学記『遙かなるケンブリッジ』を読んでおくようにと指示されたのを読んだからです。父阿川弘之と藤原正彦の父『新田次郎』、そして週刊新潮に『窓ぎわOLシリーズ』を10年間書き続けた『斉藤由香』の父『北杜夫』の3人は文士仲間の大仲良し。各々が子弟を紹介し会う仲だったのですね。とりわけ藤原正彦のエッセイは、哲学的でもあり世俗的でもあり、読み応えがあります。このストリーキングは秀逸で、数学者がこのように感じたということに、面白さを感じました。(^.^)

この本がエッセイストクラブ賞を貰うまでに人気化した下りを、藤原正彦は父新田次郎の言葉で書き記しています。『私が初めて書いた「若き数学者のアメリカ」の原稿を読んだ後、「面白い、非常に面白い。お前がこんなに書けるとは知らなかった。水準以上だ」と、嬉しそうに言ってから、急に真面目な顔になり、「しかし親のひいき目というのがあるかも知れないからな。オレの意見は余り信用おけないぞ。編集者に読んで貰わないと」と付け加えた。それでも私の本が好評を得て、エッセイストクラブ賞まで貰った時は、本当にうれしそうだった。また、増刷通知の入る度に、「ほうすごいね―。エッセイでね―」を連発していたし、6万部を突破した時は、自分の本が60万部を超した時よりはるかに喜んでくれた。そのことを外部の人達から誉められると、帰宅するなり、アルコールの臭をまき散らしつつ、相好を崩して「でもなー息子よ。調子に乗っちゃいかんぞ―。みんなオレが喜ぶことを知って言うんだからな」と言って、気色満面に笑うのだった』。(藤原正彦著『数学者の言葉では』より)

★今日はJ1、第2節。サンフレは好調川崎と。相性は良いのですが、大久保、中村には注意ですね。森崎和、高萩、柏が帰ってきたので、戦力的に分厚くなりましたね。さあ、開幕2試合、連勝で勢いをつけてくださいませ、森保監督殿。スコアは1-0の勝利と予想します。(@_@)

★知りませんでした、カナダでは英語、フランス語に次ぎに話されている言語はウクライナ語だそうです。1950年代から、ソ連の支配を嫌悪してカナダに移住したウクライナ系コミュニティーは120万人に達すると。ロシアはソ連時代のあの『プラハの春』の軍事介入と同じ行動を取って、グルジアの南オセチア自治州、アブハジア自治共和国に軍事介入し、2008年に両地域を『独立』させ、保護国としました。北極の熊は、いつまでたっても熊であり、羊にはなりきれません。

『クリミア自治共和国にいるロシア人を保護する』というのがロシアの進駐の屁理屈。クリミアにはロシア人はいなくて、ロシア系ウクライナ国民が居住するというのが正解ではないでしょうかねえ。そして『住民投票により、ウクライナ離脱派が勝利すれば、独立を認める』と。この国際法を無視した屁理屈でいえば、『チェチェン人は独自の国を作る権利がある』、ということになります。仮にチェチェン人が要求すれば住民投票が実施され、『独立派』が勝ったら、独立させるのですねプーチンは。チェチェンは、ロシア民族と、言語、習慣、宗教が全く違う独立した民族です。チェチェン以外にもあっちこっちで独立を志向する民族がいます。全てのリクエストに応えて是非是非住民投票をさせて下さいませ。さあ、どうする『プーチン閣下』。

★世界の自動車ジャーナリストが選ぶ2014年の『世界カー・オブ・ザ・イヤー』の最終候補3モデルに、日本車では唯一『マツダ新型アクセラ』が選ばれました。アクセラが受賞すれば、マツダとしては08年の『デミオ』以来となります。他は、アウディA3とBMW4シリーズ。

また、アクセラは『世界カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー』の候補としてもBMWi3、ベンツのCクラスと共に最終3モデルに選ばれました。いずれも最終結果は4月のNY国際自動車ショーで発表される予定。なんとも嬉しい話ではあります。広島から世界一の車が出る可能性が現実的になるとは。(^.*)

★石破自民幹事長は、昨日首相との会談を行った後、軍事的な台頭を続ける中国への抑止力として『アジア版NATO』を披露。構想の前提は自衛隊による『集団的自衛権行使』が必要となります。さらには、公明党の同意、野党との論戦、関連法案審議と、難関が控えては居ます。が、私はこの案に賛成します。どう猛で独善的、排他的、少数民族虐待の『中国独裁共産党王朝』に対抗するにはとてもよいアイディアであると思います。自民党は嫌いですが、この案には賛成です。(@_@)

■今日の画像は、『スコットランドの花咲く小道』と、呉市吉浦の『烏帽子岩山』です。ファンタジックなスコットランドですねえ。烏帽子岩山: ̄帽子岩、↓す淵瓮蕕寮篳鼻↓キΕライミングの準備をするチーム。この絶壁を登るのですから、素晴らしいです。感嘆。(^.^)

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