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Channel: Freeman 雑記帳・広島
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ジャーナリストの魂⑭『NYTからレッドソックスに売却された、ボストン・グローブ』

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人口60万人の大都市ボストンには、地方紙として老舗の2紙が拠点を構えます。『ボストン・グローブ、22万部』『ボストン・ヘラルド、12万部』が。その地元紙ボストン・グローブが『つぶれるもしれない』というニュースが2009年春、全米を駆け抜けました。それは、グローブ紙自身が一面トップで報じた記事でした。親会社のNYタイムズ紙・NYTがその経営難から、グローブ紙を売却し、リストラを図ろうとするもの。

親会社のNYT紙は08年に60億円の赤字を計上、グローブ紙も50億円という過去最大の赤字を記録し、09年にはさらに85億円の赤字に膨らむと予想されていました。日本の新聞社の大半は社内に労働組合組織を持つのに対し、アメリカでは一般的に内部に組織はなく、必要に応じて外部の非営利組織の組合に加入します。グローブ紙の従業員のうち、1,400人は、計13の外部組合に分散加入していました。NYTの経営陣が緊急会合に招いたのは、この13組合のトップ13人でした。経営と編集の機能分化が進むアメリカの新聞業界では、編集部が経営情報に接する機会も多くありません。この場合も、編集部は13の組合から情報収集するはめに。

経営陣が実行した再建策は、『1/3の原則』でした。予算を1/3に減らし、人員を1/3に削減し、発行する新聞のページ数を1/3減らす。その上で、ヽこ以麁擦らの撤退、地域密着化の徹底、D敢妻麁擦亮荳狢寮の見直し、ぅΕД屮汽ぅ箸僚室臓↓ヅ纏卩淆里悗了夏△亮孫圓任靴拭

グローブ紙はこの危機以降、すべての海外支局を閉鎖し、外国や首都ワシントンでの国政ニュースはできるだけAP通信やNYT紙など提携契約する大手メディアの記事を使うよう方針転換を図りました。そして550人体制だったスタッフを350人に削減。一方で、オンラインの分野では拡大路線に転じて。

グローブ紙が直面した課題は、地方の大手紙ほどNYT紙やワシントン・ポスト紙など全米規模の有力紙との競争に躍起となり、海外や全米各地に支局を展開して経営規模を拡大させてきたことによります。だがこうした地方大手紙は、危機を迎えるのも早かったのです。直接的な原因は、リーマンショック後の『購読者』と『広告費』の急激な減少でした。09年上半期には、購読者は前年比▲19%も落ち込みました。部数が減少すればそれに伴う購買料収益も減りますが、それ以上に業界が打撃を受けたのが、新聞広告費の激減でした。

13年春、NYT紙は結局、グローブ紙を地元の大リーグ球団ボストン・レッドソックスのオーナー、ジョン・ヘンリーに売却します。売却額は70億円、NYTが買収した1993年当時の1/16でした。地元からはこの売却激は比較的冷静に受け止められました。それはNYTより、まったく別のビジネスで利益を上げているヘンリーが所有する方が、よりグローブ紙の経営を支えられるという期待感があったからです。グローブ紙は廃刊の危機にさらされることもなく、引き続き新聞発行を続けています。

一方NYTは、グローブ紙の売却理由について、グローブ紙は優秀な新聞メディアであったが、他の新聞社と同様に、インターネットに読者や広告を奪われ、収入が激減した、と指摘。またNYT紙自身、さまざまな資産を売却するなど経営のスリム化を進めており、12年度だけでも所有する地方紙16紙を売却したと説明しました。  (参考: 大治朋子著『アメリカ・メディア・ウォーズ』)

★司馬遼太郎の大作、『坂の上の雲』と『翔ぶが如く』を再読しました。全集で、二段組で全3巻と全4巻。圧倒的なボリュームです。念のため、調べると、文庫本で8冊と9冊。まあ、よく調べ、よく歩き、よく書いています、遼太郎は。この二つの歴史小説を読み、遼太郎の言わんとする哲学がおぼろげながら理解できました。

その一は、明治維新は世界に冠たる無血革命で、その後の日本の近代化に資したという高い評価が虚構であること。維新政府は、世間から見れば単に江戸幕府が薩長閥の太政官にうつり変わっただけで、国民、人民は過酷な金銭徴税、理不尽な徴兵制などにより、農民一揆、さらには廃刀令を契機に士族の反乱があちこちで起こるという不安定な社会になりました。決してきれい事ではなかった明治維新が、現在ではアカデミックに成功の維新であったかに伝えられるのは、維新政府が自らの正当性を国民に植え付けるため、教育の分野での歴史の捏造、強力な反政府の言論封じなどがあったからに他ならない、と遼太郎は説きます。まさに、太平洋戦争中の軍部独裁教育と同じですね。

その二は、伊藤博文が作った帝国憲法に『軍部の統帥権は天皇にあり』と定めたこと。これを山県有朋が引用し、軍部の運営に内閣の意見や監視を斥け、一直一路太平洋戦争に突き進みました。内閣はただただ軍部から要求される軍事予算の確保に汲々としたのです。文民統治が図られていなかったのですねえ。

私は、この過程の出来事は、島国日本の特徴であろうと思います。西洋では、中世以前から戦争の連続で、国と国の結びつきや離反、条約の締結と廃棄が繰り返され、外交面でもウソを本当にするしたたかなテクニックを持っていたのですねえ。あのソ連の不可侵条約廃棄による満州、北海道への進軍はそれらの歴史からソ連が学び、熟達していた外交的、戦術的テクニックだったのです。外交とは騙しあいなり、と私は思います。太平洋戦争に突入したのも、アメリカ・ルーズベルト大統領の陰湿な外交術に、単純な日本外交が乗せられただけの話、です、本当に。

★『杉浦千畝』。第二次世界大戦で、リトアニア経由でドイツから逃れるユダヤ人に、本国の命令を無視し、人道的見地から日本を通過するビザを6,000人に発給しました。エストニアでこのほど、この杉浦の人道的偉業をたたえ、75周年の式典が行われました。老齢のイスラエル人女性が、あの杉浦さんのビザ発給がなければ、私は今日ここで話しをするころとは出来なかったと、述懐していたのが目を引きました。

ところが、日本の外務省は、杉浦さんが本省の指令を無視したということで、戦後OBを含む外務省職員録から杉浦さんの名を抹殺してしまうのです。これらの経緯は、杉浦さんの妻であった杉浦幸子さん著『六千人の命のビザ』(大正出版)に詳しく記述されています。都合の悪いことは隠す日本の官僚、姑息なり、日本国外務省、です。

★戦後70年の8月6日に際し、『Thank God for the Atom Bomb』と題した長文が米国『ウォールストリート・ジャーナル』に掲載されました。筆者は同氏の副編集長。曰く『広島と長崎への原爆投下は単に戦争を終わらせた恐ろしい出来事ではなかった。多くの人々の命も救ったのである。原爆は日本帝国を平和主義に変えたのだ。広島の夜の明かりを見れば、その文化の穏やかさに気付くことだろう。原爆が投下されたことを神に感謝しよう』。なんたる傲慢、なんたる不見識。WSJの看板が泣きます。

この論評に対し、日本の新聞メディアは一切反応していません。無防備の一般市民を大量虐殺した『ハーグ条約違反の原爆投下と都市爆撃』に対し、なんら反論しない日本のメディアは果たしてジャーナリズムの精神を持っているのか、と強く疑います。原爆投下の指示命令は、ポツダム宣言発表前に行われており、一説によるとルーズベルトが勃興した共産主義国への牽制のため、とにかく原爆を落としその効果を知らしめたかった、と言います。ベトナム戦争、アフガン戦争、イラク侵攻、いずれもアメリカの都合の良い侵攻理由で世界の平和を乱しています。そして結果、最悪の『イスラム国IS』をさせ、あの人類の宝とも言える『パルミラ遺跡』を爆破破壊させ、400万人を超えるシリア難民を生み、そしてそれらがヨーロッパに流れ込む、まさに民族大移動を創り出したのです。これらのアメリカの責任について追及、論評するメディアが日本に存在しないこと、これはまさに世界の七不思議ではないでしょうか。それとも日本のジャーナリズムは死んだか?

★トヨタが、定年再雇用者への待遇を、60歳までと同じ条件に改善するそうです。トヨタが実施すれば、自動車各社は時間差はあっても右へ習え。普通、60歳からの賃金は半減が常識ですが、大手企業ではここ4、5年の間に、定年が65歳までとなり、処遇条件もケチらない形に改められるでしょう。が、そこは企業、60歳までの年齢給のカーブを寝せて、トータルではイーブンとするでしょうねえ。これもまたヤムを得ません。でも定年で再就職の瀬戸際に追い込まれることがなくなり、収入も保障される新しい時代の日本の賃金体系が誕生です。大賛成ですね。

★それにしても驚き、桃の木、山椒の木、ですねえ、『VWの排気ガス不正問題』。世界で1,100万台が該当すると。アメリカでは罰金が2兆円に達するとも。この10年間で、販売台数を2倍に伸ばし、トヨタとその覇を競ったVWは、急成長の裏に歪んだ行為があったという訳ですねえ。クリーンDEと名乗りながら、ダーティーであった訳で、VWを所有するユーザーは怒り心頭でしょう。ユーザーの訴訟が泡の如く起きるでしょうねえ。仮にリコールだとすると、新しいエンジンに載せ替えるのか。大変なことですこの結末、どのような幕間になるか、ちょっと興味と心配と。

★今日の画像は、『彼岸花』です。暑さ寒さも彼岸まで、と言われた通り、暑さも治まり、秋の気配が濃厚に。いい季節ですねえ、秋。(@_@)

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