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Channel: Freeman 雑記帳・広島
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『即席ラーメン生みの親「安藤百福伝⑮」 「問屋から津波のような注文が次々に」』

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今日の画像は、広島の自動車メーカーマツダがジュネーブモーターショーで発表した『新世代SUV CX-30 シーエックス・サーティー』と、『世界遺産機戮任后1 ストーンヘンジ/英国、2 コモド島 インドネシア、3 ンガリロ国立公園/ニュージーランド、4 ビクトリアの滝/ザンビア、ジンバブエ、5 イグアス国立公園/アルゼンチン、です。右下をクリックすると、大きな画が見られます。


★★NHKの朝ドラ『まんぷく』。チキンラーメンの生みの親『安藤百福さんの妻仁子さん』を主人公にしたドラマ。フィクションの部分もだいぶある。百福さんが台湾生まれで、織物の商売で独り立ちされたこと、終戦時には不動産に手を染め、その関係で信用組合の理事長に祭り上げられたことなど、経済人、財界人としての横顔が落ちている。ここに百福さんの『私の履歴書』を参考に、『チキンラーメン、即席ラーメン、百福さん』の歴史を綴る。

★★★チキンラーメンを発売したばかりの1958年(昭33)の夏、資金は早くも底を尽きかけていた。それでもやり繰りして東淀川区田川通りに古い倉庫を借り、工場に改装した。大量生産が技術的に可能かどうかを実験するテストプラントだった。生産量は1日1,200ケースでスタートした。

ある日、工場の仕事を手伝ってくれていた家内が家に帰る途中、友人に会った。家内は、チキンラーメンが入った段ボール箱を提げていた。友人に『今ご主人は何をされてますか』と聞かれ、『ラーメン屋さんです』と答えた。『あら、ラーメンですか・・・』と驚いた様子だったと言う。少しムッとした家内は『主人は将来必ずビール会社のように大きくなると言っています。こちらはビールと違って税金がかかりませんからね』と説明したが、相手には通じなかった。

ところがその友人に手にしていた1ケースをあげたところ、ある宮様のお口に入り、その後も『もう少しわけてもらえないか』というお話があった。それを聞いた時には、即席めんは幅広く受け入れられる商品に育つ予感がした。

だが、百貨店ではあれほど好評だったのに、いざ食品問屋に持ちこむと反応は冷たかった。『袋に入っただけで、今までの乾めんとどう違うんや』と言うのだ。試食した問屋の主人は、何より85gで35円という値段が気に入らなかった。『うどん玉が6円ですよ。乾めんでも25円や。これでは商売にならん』。どの問屋も異口同音に、乾めんと同じようなものだ、値段が高いと言う。私は、見た目は似ていても中身が違います。こちらはお湯をかけるだけで食べられるラーメンなんです、と説得した。


一方で、これは今までにない商品だから、新しい流通と新しいシステムで売りたいと思った。現金決済である。問屋に『現金で決済を』と申し入れた。すると開いた口がふさがらないという顔をされた。当時の業界の慣習では、2カ月、3カ月の手形決済が普通だったからだ。『米は掛け売りをしないでしょう。即席めんも同じ主食的な商品だから、手形で決済するのはおかしい』と粘ったが、納得してもらえない。『とにかく置くだけ置いてください。代金は売れた時で結構です』と言って引き上げた。

大阪の木津市場に中谷商店という食品問屋があった。ご主人の中谷儀三郎さんは少し反応が違った。『これはなかなか大変な商品やな』と、味や簡便性だけでなく、将来性まで評価してくれた。その中谷さんも取引は現金でと言うと、さすがにあきれていた。

消費者から届けられる声は『おいしい』『便利ですね』と上々だったが、問屋さんの態度は今一つのままだった。そんなある日、一本の電話がかかってきた。『安藤さん、売れるがな。チキンラーメン、100ケースでも200ケースでも持って来て』。ある問屋からの注文の電話だった。外の問屋からも次から次に電話が入り始めた。『現金払いでええから、出来るだけぎょうさん回してくれ』『何ならこちらからバタコで取りに行きましょか』。

チキンラーメンが欲しいという消費者の声が小売店に届き、問屋への注文が殺到したのである。大きな津波が消費の末端から押し寄せて来た。明くる日から、目の回る忙しさに一変した。(参考: 2001年9月・日経新聞『私の履歴書』。07年没、享年96歳)


★★いよいよ『平成』も終わる。『昭和』はどんどん遠くなる。その昭和の歌謡界で、是非ともアップしておきたい人、『西条八十さん』。西条さんは、早稲田大の仏文の教授でありながら、童謡や校歌、歌謡曲の作詞も行って、同僚らから『堕落だ』と厳しく攻められた。なら、大衆のためだと、教授職を投げ打つ。そして作詞と仏文の研究を貫きとおし、幾多の名曲を生み出した。(「山のかなたに」「赤い靴のタンゴ」「越後獅子の唄」「角兵衛獅子の唄」「こんな私じゃなかったに」)


『西條八十 天才歌手・美空ひばりに出会う』
その少女と出会ったのは、新東宝の撮影スタジオだった。八十は『山のかなたに』という映画の主題歌を頼まれ、その打ち合わせに撮影所を訪れた。昭和25年の爽やかな秋の日である。撮影所から帰る途中、柳家金語楼主演の『向こう三軒両隣り』の撮影スタジオの前を通りかかった。セットの中を覗くと休憩中らしく、ガランとしている。セットの隅に、小学生くらいの女の子が腰掛けていた。その姿がひどく寂しげに見えたので声をかけた。『お嬢ちゃん、金語楼劇団の子かい?小さいのに感心だね』。すると女の子がにっこり笑った。お世辞にも器量が良いとは言えないが、笑顔になんとも言えぬ愛敬がある。『私、これでもコロンビアの専属歌手よ』『ああ、君が・・・』。巷で評判の美空ひばりだった。

『君はひばりちゃんだね。僕はコロンビアの作詞家で西條と言います。よろしく』。歌を聴いて、一人前の歌手と認めていた八十は、ひばりを大人扱いして自己紹介をした。『あ、西條先生。気がつかなくてごめんなさい』。口のきき方や、髪を触るちょっとした仕草が子供とは思えないほど大人びていた。そこに母親が帰ってきて、挨拶をした。『先生に歌を書いていただくのが私ども母娘の夢なんでございます』媚びるように母喜美枝が言った。『そうですか。機会がありましらたいずれそのうち』。八十はそっけなく返事をして、その場を去った。

コロンビアが、『ひばりのために正月向けの歌を』と依頼してきたのは11月だった。さて、どんな歌がひばりに合うだろうか。正月向けということで、東京の正月の風物詩を頭に浮かべた。羽根突き、福笑い、歌留多、凧揚げ、お年玉、いや、そんな子供っぽいものはひばりらしくない。晴れ着、年始回り、三河万歳、獅子舞・・。それだ!正月になると、越後からやってくる獅子舞の子供達がいる。越後獅子の子供達は、親方の目を恐れながら、一生懸命逆立ちしたり、とんぼ返りをした。見物衆の拍手に応え、投げ銭を集めるその姿が、ひばりと重なった。ひばりにとっての親方は、レコード会社のディレクターであり、映画監督であり、マスコミであろう。ひばりに獅子舞の子供を投影して歌を作った。
◇『越後獅子の唄』
 笛に浮かれて 逆立ちすれば 山が見えます ふるさとの
 わたしゃ孤児ミナシゴ 街道ぐらし ながれながれの 越後獅子
   今日も今日とて 親方さんに 芸がまずいと 叱られて
 撥バチでぶたれて 空見上げれば  泣いているよな 昼の月


これに万城目が哀調に満ちた曲をつけた。しかも、前奏及び2番と3番の間奏に獅子舞の太鼓の音を入れ、越後獅子の雰囲気を出している。八十はレコーディングに立ち会い、ひばりの歌声を聴いた瞬間、その歌唱力に舌を巻いた。みてくれは13歳の子供なのに、子供の声ではない。どんな高音のパートも裏声を使わず、地声で歌う。音域が驚異的に広いのだ。聴いた途端、背筋がゾクゾクっとして、不覚にも涙がこみ上げてきた。正直『いいなあ』と思った。

映画監督の大曽根辰夫は『越後獅子の唄』を聴いて、『鞍馬天狗・角兵衛獅子』の杉作役はひばりの他にいないと思った。戦前からのアラカン復活の鞍馬天狗。喜美枝が大曽根の出演依頼を受けたことで、主題歌の『角兵衛獅子の唄』は、当然八十と万城目に依頼された。八十と万城目は前作の二番煎じになるのを恐れなかった。まるで作風の違うものを作ったら、ひばりファンが許さないだろうと、泣き節を生かすべく、一層哀しげな歌詞と曲調に仕上げた。

レコーディングの際の音合わせでひばりの歌声を聴き、その巧みさに改めて感心した。哀調あふれる高音の伸びが素晴らしい。万城目が『ずいぶん練習したもんだ』と呟いた。『越後獅子の唄』よりも難しい曲に思われたが、ひばりはいとも簡単に歌いこなした。映画は翌年のお盆映画として封切られ、鞍馬天狗シリーズの中でも飛び抜けた観客動員数を記録する。どこの映画館も満員で、浅草6区の松竹直営館では、場内に入りきれないほどの客が押しかけたため、どの回もフィルムを一巻飛ばして、上映回数を1回多くしたほどだ。観客は、いきなり筋が飛ぶのをおかしいと思いながらも、ひばりの歌が聴ければ満足とし、文句も言わずに帰ったと言う。 (参考: 吉川潮著『流行歌・西條八十物語』)


★★<高齢者狙う『アポ電強盗』のマニュアル>江東区、渋谷区で同一グループの犯行? 東京都江東区で80歳の女性が手足を縛られて死亡しているのが発見された事件は、事前に犯人が現金の有無を尋ねる『アポ電(アポイントメント電話)』を入れ、犯行に及んでいたことがわかった。

2月28日に被害にあったのは、江東区内のマンションで一人暮らししていた加藤邦子さん。犯人グループは事前に、『現金が家のなかにありますか』という『アポ電』を入れ、被害者が自宅に現金を置いていることを確認した上で、犯行に及んだという。加藤さん宅の電話線は切られ、インターホンも本体ごと持ち去られていた。

ところが、室内には現金150万円が手付かずで置かれ、寝室の押入れの40センチ四方の金庫も物色された形跡はなかった。金庫はかなり重く、捜査員でも一人では持ちきれないものだったという。『室内は足の踏み場がないほど、物色されていた。犯人らは天井まで探していた。短時間で引き上げようとしたのか、犯人グループは金庫の場所がわからなかったようだ。加藤さん宅には介護のヘルパーが週3回来ており、そのタイミングを外した計画性を感じる。今回は防犯カメラに3人の男が逃走する様子が映っている。先日も渋谷区でアポ電から、強盗が入り、400万円が奪われた。1~2月に渋谷区では同じ手口で2件の強盗が起きている。加藤さんの事件も同じグループの可能性が高い』(捜査関係者)。

『アポ電』とは振り込め詐欺などで、事前に息子などになりすまして、現金の有無を聞きだし、家にどれくらいの金があるかを値踏みする行為だ。かつて、振り込め詐欺で逮捕された経験のある男性はこう解説する。『アポ電で、いくらくらい金があるか見極めて、1回で終わるのか、2回、3回と騙せるのか見極める。江東区や渋谷区のアポ電からの強盗は、振り込め詐欺を応用した形ではないか』。


さらに刑務所にいた時の経験談として、こう振り返る。『今、拘置所、刑務所は振り込め詐欺で捕まった人の割合が多い。同じ部屋にいると「出所したら、次はみつからないように振り込め詐欺で大きく稼ぐぞ」などと平気で言い、どういう手口が有効なのかを研究しています。今回のアポ電から強盗という話をしていた連中もいました。アポ電に必要なトークマニュアルや高齢者リストが出回っており、簡単に情報は入る。息子のフリして現金があるのをどう聞き出すかというマニュアルです。最近は息子になりすます手口は成功率が低くなり、マスコミの世論調査や金融商品の勧誘を装うこともありますね。だから、アポ電は簡単ですよ。ただ、普通の振り込め詐欺は、こんな手荒いことはできない。凶悪な犯行をいとわない人物が入っているはず』と話す。

入手した、金融商品の勧誘の手口を記したマニュアルには、<どうしてうちの番号を知っているの? 弊社には、金融商品購入者リスト(業務用タウンページ)がございまして、1件1件、お電話させていただいております>、など細かな話法の解説が書かれていた。去年1年間で、都内ではアポ電の通報件数は3万件を超えているという。『アポ電』が入ったら、くれぐれも強盗には注意してほしい。

全く気が抜けない世の中だなあ。困ったもんだ。


★★<ウーバー、第一交通と提携 アプリで配車>タクシー大手の『第一交通産業』と『ウーバー・ジャパン』(東京)は、タクシーの配車サービスで提携したと発表した。広島県の一部地域でウーバーアプリを使って第一交通産業グループのタクシーを呼べるようになる。将来は国内各地の同グループのタクシーを対象とする計画だ。

今春をめどに広島市内などを走行するタクシー231台で、ウーバーアプリによる配車サービスを始める。第一交通産業グループは九州を地盤に全国各地で約8千台のタクシーを運行している。今後、全国で徐々にウーバーアプリへの対応を広げる方針だ。

ウーバーは、ライドシェアが認められていない日本ではタクシー事業者と連携して配車サービスを強化している。既に名古屋、大阪、仙台でサービスを始めている。営業地域や運行台数の多い第一交通産業との提携で、タクシー配車サービスの提供地域が大幅に増える可能性がある。

ウーバーアプリは配車方法が海外でライドシェアを使うのとほぼ同じなのが特徴だ。新たなアカウント取得などの必要もない。海外でウーバーのライドシェアサービスなどを使い慣れた外国人旅行者が、日本でも同じ感覚でタクシーを呼べる。第一交通産業は『まず、ウーバー利用者の多い欧米人が多く訪れる広島でサービスを始めることにした』としている。

第一交通産業は自社で配車アプリを提供しているほか、2018年9月に中国のライドシェア大手の滴滴出行と連携し、大阪でタクシー配車サービスを始めた。東京でもDeNAの配車アプリ『MOV(モブ)』に参加しているが、ウーバー陣営にも入ることで利用者層を拡大する。
国内の配車アプリは日本交通系のジャパンタクシー(東京)がサービス提供地域や対応台数で先行する。ウーバーは第一交通産業との提携でサービス提供地域の拡大をはかり、日本での影響力を高める。


★★<米朝首脳会談決裂、腹心の暴露で北朝鮮どころでなくなったトランプの窮地>
◇今回の米朝首脳会談に見られる2つのすう勢
2月27~28日、ベトナムの首都ハノイにおいて米朝首脳会談が開かれた。今回の首脳会談のすう勢に関して大きく分けて2つある。

まず1つは、北朝鮮の金正恩委員長がトランプ大統領の弱みに付け込もうとして制裁の完全解除を迫ったことだ。しかし、さすがにトランプも北朝鮮による非核化への取り組みという条件なしに、制裁解除の要求をのむことができなかった。この溝を埋めることが難しく、合意文書は発表できなかった。もう1つは、トランプ大統領にとって、かつての腹心とも言えるコーエン氏の暴露問題が突如として浮上したことだ。2月27日、米下院監視・政府改革委員会の公聴会にてトランプの長年の腹心だったマイケル・コーエン被告がトランプの“実態”を暴露したのである。

公聴会では、耳を疑うような内容が次々に暴露された。在米のベテラン政治アナリストはコーエン氏の暴露に関して、『開いた口がふさがらなかった。これまでに出版されたどの暴露本よりも、トランプの実態が赤裸々に世論に示された』との印象を語っていた。コーエン氏の暴露を受けて、トランプ氏は北朝鮮問題どころではなくなったはずだ。世論への対応のために、同氏は急ぎ帰国しなければならなくなり、記者会見が早められたとみる。その結果、合意文書の作成などにかかる時間が確保できなかったのかもしれない。それは、米国からの譲歩引き出しを狙っていた金委員長にとって、大きな誤算だっただろう。さらに、合意に期待していた韓国の文大統領にとっては、言葉に尽くせないような失望につながったことだろう。


◇トランプの弱みに付け入ろうとした金正恩
今回の首脳会談に至る協議に関して、安全保障の専門家らの間では、北朝鮮がトランプ政権に対して有利に交渉を進めていると、先行きを懸念する見方が多かった。中には、早急に首脳会談を実施してしまうトランプ大統領の判断は危険と指摘する者もいたほどだ。その背景には、金委員長が、点数を稼ぎ自らの政治基盤を強化しなければならないというトランプの“弱み”に付け入ろうとしたことがある。トランプ米大統領にとって、北朝鮮政策は支持獲得=点数稼ぎの手段だ。同氏は2020年の大統領選挙で再選を果たすために、有権者から支持を獲得したい。そのために同氏は北朝鮮との2回目の首脳会談の実現にこだわった。

当たり前だが、北朝鮮が米国を射程に入れるICBMの開発に取り組んでいることは、米国民の生活を脅かす。トランプは北朝鮮から米国を射程に入れたミサイル発射実験などを行わないとの合意を取り付け、国民の安全を守ったと成果を誇示したかった。それは、近視眼的に点数を稼ぐ発想であり、危険だ。北朝鮮の金正恩委員長は、トランプが点数稼ぎに焦っていることを冷静に見抜いていた。昨年のシンガポールでの首脳会談後、米朝は朝鮮半島の非核化や制裁の緩和・解除に向けた協議を重ねてきたが、進展は見られなかった。それが北朝鮮の戦術だった。金委員長は米国をじらし、その出方を確かめたかった。米国がしびれを切らして譲歩を示し始めたことを受けて、金委員長はトランプ大統領に段階的な非核化を進める用意があると伝え、交渉の主導権を取りつつ首脳会談の実現を目指した。

2回目の首脳会談が実現できればトランプは、『金委員長と友好関係を深め、従来から議論を前進させることができた』と成果を誇示できる。それと引き換えに、金委員長は制裁の解除を米国に迫ろうとした。金正恩委員長が満面の笑みを浮かべてベトナム入りしたことを見ると、もしかすると制裁の解除をトランプが口走るかもしれないという淡い期待が同氏の脳裏にはあったのだろう。


◇無視できないコーエン暴露の重大性
想定外だったのは、27日の公聴会におけるコーエン被告の暴露だ。この暴露によって、米国内では大統領が犯罪に関与した疑いがあるとの見方が急速に広がっている。トランプにとっても、韓国の文大統領や北朝鮮の金正恩委員長にとっても、同被告の証言内容は衝撃だった。重要なことは、今回の暴露によって、米国内におけるトランプの立場が大きく変化する可能性があることだ。それは、今後の米朝の交渉に無視できない影響を与える。コーエン被告はトランプの不動産ビジネスなどを支えた腹心・忠臣だ。コーエン氏のトランプに対する忠誠心は非常に強かった。それは、同被告がトランプ氏の不動産取引に関して、以前に連邦議会に偽証したことがあったことからも明らかだ。

27日の公聴会でコーエン氏は、トランプは人種差別主義者でありペテン師だとこき下ろした。この証言の意味は決して小さくはない。多様なバックグラウンドを持つ人々が暮らし、それが経済のダイナミズムを支えてきた米国において、人種差別は許されないテーマの1つだ。また、同被告は、選挙戦中にトランプの長男がヒラリー候補の評判を悪くするためにロシア政府関係者と面会していたとの見解も示した。それは、有権者に誤った印象を与え、投票に影響を与えていた可能性があることを意味する。今回の暴露の内容が正しいとすると、トランプ氏は自らの虚栄心を満たすために、世論を欺いていたことになる。モラー特別検察官による捜査も終結に近づいている。

コーエン氏の暴露を受けて、トランプ大統領は、如何にして自らの潔白さを有権者に示すかに心血を注がざるを得なくなった。点数稼ぎのためにハノイで米朝首脳会談を続けている場合ではなくなったのである。トランプ氏にとっても、今回の暴露内容はかなりの痛手だ。それは、首脳会談後の同氏の表情の険しさからもよくわかる。エアフォース・ワンに乗り込む前の同氏の顔色には、かなりの焦燥感、不安が浮き出ていたように見えた。


◇とばっちりを受けた韓国が直面する苦境
トランプ大統領が点数稼ぎに躍起になっている間、北朝鮮は同氏の点数稼ぎの弱みに付け入ることができた。しかし、今回のコーエン氏の暴露により、北朝鮮は方針の修正を迫られている。米国内では、民主党を中心にトランプ大統領の疑惑捜査が進む。状況によっては、大統領が違法な取引などを行っていた疑いなどが、芋づる式に明らかになることも考えられる。トランプは世論対策に注力せざるを得ない。米国大統領の立場が怪しくなり、弱みに付け込むことが難しくなったことは、金委員長にとって大きな誤算だろう。首脳会談後の金委員長は、それに対するいら立ちを隠しきれなかった。会談後の同委員長の表情からはベトナム入りした時の笑顔が消え去り、不機嫌だった。

この結果、最も影響を受けるのは韓国かもしれない。経済政策の失敗から、文大統領は北朝鮮との融和政策を進めることで、民衆の人気を獲得したい。そのために、文大統領は米国に対して北朝鮮との対話を求めてきた。しかし、現在、トランプには北朝鮮との交渉を進める余裕はないかもしれない。事実、ポンペオ国務長官は今後の交渉に前向きな姿勢を示したにもかかわらず、トランプは次回の首脳会談の開催にコミットできないとの見解を示した。今はそこまで頭が回らないというのが実情だろう。忠臣であったコーエン被告の暴露が同氏に与えたショックは計り知れない。

人気取り政策の目玉だった北朝鮮問題の行方がわからなくなったことで、韓国・文大統領の支持(人気)回復の道が閉ざされることも懸念される。米国がトランプ氏の疑惑に揺れる中、北朝鮮が韓国を重視する必要性は低下する。北朝鮮は中国との関係を元にして体制の維持を目指すだろう。これは文大統領にとって大きな痛手だ。文氏が支持率の回復を目指すことはかなり難しい。


◇コーエン被告の暴露のマグニチュードは大きい。
今後、米国内でトランプ大統領への批判が高まる場合、それは朝鮮半島情勢の不安定感上昇にも直結するだろう。その意味で、トランプ大統領は世界の政治・経済にとって最大のリスク要因の1つになってしまった。( 真壁昭夫法政大学大学院教授筆)


★★<東京医科大、寄付した7人加点か 補欠で合格 第三者委>東京医科大は、同大の不正入試について調べていた第三者委員会(委員長=那須弘平・元最高裁判事)の追加調査報告書をホームページで公表した。ある年の入試で多額の寄付をした7人の受験生について、得点を加点する個別調整が疑われると指摘。また、少なくとも2人は、合格発表前に大学側と受験生側の間で寄付をめぐるやり取りが『強く疑われる』とした。文部科学省は入学に関連して寄付金を受け取ることを通知で禁止しており、抵触する可能性がある。

報告書によると、第三者委は受験生の保護者への聞き取りや、臼井正彦前理事長=贈賄罪で在宅起訴=のパソコンに残されていたメールデータ、臼井前理事長が作成した、ある年の入試の受験生と寄付金などに関するメモを分析した。

メモに記載された11人のうち、1人は正規合格し、残りの10人はいずれも補欠の繰り上げで入学。10人については『1000~2500』の手書きの記載があり、実際に受験生の保護者や関係者が300万~3千万円を寄付していたという。メモに書かれた数字と、寄付額が一致した受験生が5人、寄付額が上回った受験生が2人いた。また、計7人については、入試で得点の個別調整が疑われたという。

第三者委はさらに、臼井前理事長のメモの記載状況などを調べた結果、3人の受験生について『1000万』などと書かれているのは『補欠一括繰り上げ合格の発表前に記載されたと考えるのが合理的だ』と指摘。この対象だった2人は、合格発表前のやり取りがあったことが強く疑われると結論づけた。

まったく暗い世の中だなあ。もう明るいニュースは藤井棋士くらいのものか。政治も大学も、そして一人住まいの老人強盗も。困ったもんだ。

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