■ジャーナリスト。1968年愛知県春日井市生まれ。早大教育学部卒、93年日刊工業新聞入社。98年に東洋経済新報社へ移り、ゼネコン業界などを担当。09年同社を退社し、フリーランスのジャーナリストとして独立。近著『凋落 木村剛と大島健伸』は新潮ドキュメント賞の候補作になった。
■高橋篤史は、メディアの表面面と裏面との乖離を鋭く指摘し、真実をどう捕らえ、どう報道していくか、まさにメディアの責務を語るジャーナリストだ。同時にメディアや事件に拘わった人達の変節をも。木村剛とSFCGを書いた『凋落』には、人間模様の醜さとカネがこれでもか、これでもか、と書き記されている。一体監督官庁は何をしていたのか。親方日の丸の官僚達の事なかれ主義の延長線上に『日本振興銀行』があったのだと。そして、原発問題に至っては、職務能力のない超高齢である朝日のOBが原子力振興財団の監事だと。このように隠された真実を露わにするジャーナリズムの原点が、昨今のメディアには薄れてしまっている、と感じる。特に読売の政治記事、また共同の経済取材、朝日の戦争記事にそれらを見て取れる、と私は強く感じる。更に共同は、地方新聞2千万部強を配下に持ち、その上にあぐらをかき、ジャーナリズムとしての切磋琢磨する姿勢、権力の監視人としての努力や責任感が見られないのがまっこと、日本ジャーナリズムの悲しき現状だと思う。
■本田勝一さんや、鎌田慧さんに引かれてマスコミを志望したが全てダメ。引っかかったのが日刊工業新聞。同じ新聞だからいいかと。名古屋、富山、岐阜と移動し、発表ものだけでなく自分の取材を書きたくて東洋経済新報社に。富山時代には、関西電力の黒部川排砂にも関わり、環境問題などに関心を持ちました。しかし企業にとって都合のよい原稿を書くことに限界を感じ、トラバーユを。転職先では会社四季報がルーチンで、独自取材ものを書くのは余技でした。それでも自分で発掘してきた話を署名入りで書いて世の中に知って貰うことが醍醐味に。
そしてもともと不良債権問題を取材したくて、その切り口がゼネコンに。が、高橋さんは貸し手ではなく、借り手がどういう人達だったかんき興味をひかれました。冷静になって考えると、どうしてこのような人が金を引き出せたのか、という人達ばかりで、バブルに狂っていたとしか思えません。
そこで不良債権問題の『借り手』を観察すると、彼らの裏に存在するアンダーグラウンドなネットワークの存在に気づきます。そして裏社会の人達が表に出てくる、その典型例が『イトマン事件』です。さらにそういうアンダーグラウンドな人達が不良債権問題の後に活躍の場を求めたのが、ITバルブ以降の株式市場でした。こうして現れたのが『現代の仕手筋』です。彼らは昔の仕手筋と異なり、株の売買益より、経営不振の上場会社に乗り込んで新株や転換社債を発行させ、M&Aなどで集めた資金を自分たちの手にするという金融的に高度な手法を使いました。こういう取材って、会社側がしゃべりたがらないのをあえてほじくって行く、相手が隠していることをえぐることにある種の快感を覚えています。
そのため訴訟も何度か起こされました。最高はシグマ・ゲインから訴えられた5億円の損害賠償訴訟。窮鼠猫を噛むの類でしたので、編集後記に『お断り』と題する短い説明文を入れて和解しました。他には取り下げが多かったそうです。そのような訴訟リスクがあるので、取材の過程では、例えば数字は何度も念を押します。基本的な事実関係は、別の話し手の証言と付き合わせたり、別に得た資料などを基に構成するようにしています。デタナメ経営の人材派遣会社グッドウイル・グループなどからは執拗な抗議を受けました。
東洋経済の最後の1年半は、ニュース面のデスクをしていたのですが、たとえ中身が薄くて日経のコピペみたいな記事でも、パナソニックとかトヨタなどを書くと反響が大きい。さらに、経営との距離が近くなるに従ってどうしても売ることが求められます。相続税対策とか鉄道特集とか。自分でやりたいこととは根本的に異なっており、将来の自分を想像すると次第に苦痛になって。そして働く記者と働かない記者が同じ額の給料を貰う悪平等の現実に嫌気がさして。さらには経済誌の領域を越えた取材をしてみたいと思い立ったのです。これが唯一前向きな退職理由でした。
木村剛に関しては、最初は彼の言っていることは『その通り』と思っていましたが、銀行経営に乗り出した頃からおかしさを感じていました。その後2009年2月に倒産したSFCGとの間のローン債権二重譲渡問題。その額が振興銀行の自己資本の3倍、700億円と言われていたため、これは確実に破綻すると見通し、本格的な取材に取りかかりました。その後明らかになったのは、破綻時にも彼個人の個人口座の中に少なくとも6億円ほど自由に動かせる金があったことが分かりました。振興銀行の行員の給料はすごく薄給だったのに拘わらず、彼が6億円も貯められたのは何故か。木村が持っていた振興銀行の株を、銀行の親密企業に融資した金で買わせていたからでした。結局、木村がそうやって買い取らせたカネは、遡っていくと預金者の預金ということになります。まるでタコが自分の足を食うようなブラックな図式です。
原発事故後、原発報道にメディアはどう拘わったのかを調べ、『週刊現代』や『別冊宝島』に書きましたが、朝日新聞のOBの岸田純之助さんは90歳を過ぎても日本原子力振興財団の監事をしていました。原発事故後、取材で会ましたが、高齢のためか話は一行にかみ合わず、明らかに職務遂行能力に問題があると感じられました。そういう人が原子力村の団体の監事をしているということは、電力会社と振興財団が癒着以上の、一体化をしているように思いましたね。
朝日新聞と東京新聞は今原発には批判的なスタンスで報道していますが、僕は正直言うと、朝日の科学部の大御所達と論説が過去どうだったかもっと検証して欲しい。僕は朝日のOBと名乗る人物が設立した会社が東電の広報誌『SOLA』の編集を請け負っていて、田中豊蔵元論説主幹ら多数の朝日OBが取り込まれていたことを『週刊現代』に書きました。僕が調べたところ、読売に負けず朝日は電力会社に取り込まれていたと思います。まさに『朝日新聞の看板に偽りあり』です
それなのに、今や朝日と東京は『原発ゼロにしろ』と勢いよくやっていますが、本当にそうなのかな、と。将来的にゼロに持っていくというのは分かりますが、一足飛びにゼロに出来るような幻想を振りまいていいのかな、と。僕はそんなに簡単にユートピアが出来るとは思えないんですよ。原発導入の頃、大手メディアはどこも諸手を挙げて賛成でした。過去に犯した過ちを、逆方向に振れた今、同じように繰り返しているのではないかと心配しています。
(参考: 大鹿靖明著『ジャーナリズムの現場から・高橋篤史』)
★この振興銀行に続く、新銀行の大失態は、東京都が出資し、設立した『新東京銀行=石原銀行』。これも同様に赤字垂れ流しで、都は合計1,400億円もの出資を行いました。やっと黒字基調になり、地銀との合併が可能になりましたが、あの正義面をした石原元知事の軽薄なる経済失政=政治犯罪とも言える事件ではあります。
★厚労省は、人材派遣会社を従来の届け出制から『許可制』に、切り替えます。あれほどの社会的混乱を予測出来ず、人材派遣を全面的にしかも一気に自由化した厚労省の行為は、まさに政治的犯罪とも言えます。特に、派遣会社の手数料=ピンハネ、について全くノーチェックで、派遣会社グッドウイルのトップ折口雅博は毎夜100万円単位の豪遊をしていた例も報告されています。旧労働基準法で、公的な機関以外の『職業斡旋』を禁止していたのは、戦前の職業紹介の実態、ピンハネの多さ、虐待的労働など問題が多かったからです。『賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ』。まさに厚労省は愚者の集まり、『愚者が経験から学ぶ』集団だと私は思います。
今回のネット150万人年金名簿流出についても同様ですねえ。問題が起こってから、トップに報告されるまでなんと20日以上もかかっています。それまでは係長止まりの現場で対策をしていたというテイラクです。もう厚労省はウジ虫の巣、集団としか言いようがありません。せめて国民のための働き蜂の集団であって欲しいと思うのは私だけでしょうか。
★FIFA・ブラッター会長の突然の辞任。側近のバルク事務局長が、南アからジャック・ワーナー元会長に送金に直接関与した事実が浮上したため。その証拠の書簡を、英PA通信が入手し、全世界に配信しました。捜査の手がブラッター会長にも達する状況と。会長はこれに屈したと言われます。まさに『ジャーナリストの魂』を具現化したPA通信ではあります。日本の通信社の雄、共同通信殿、しっかりしてくださいよ。PA通信に負けないように、権力・社会の監視役をしっかり務めてくださいませ。またスポンサーのVSAもFIFAが改革に着手しないならばスポンサーを下りることを表明し、会長辞任にプレッシャーをかけました。
2018年ロシア、2022年カタール。これら開催予定地も再見直しの苦境に入ります。おそらく両国は袖の下を使って、開催国を獲得したのでしょうから。プーチンが西欧の陰謀だと大騒ぎだそうです。
★ブラジルが政府予算、2.8兆円、3.5%の執行を停止します。プライマリーバランスPBの黒字化を図り、財政健全化を目指すため。併せて銀行に課す社会負担金を5%引き上げます。この停止には高インフレ退治の意味合いも。年率8%という高インフレに悩むブラジル政府が、身を切る策に出たということですねえ。反対にギリシャ。元凶は、ギリシャ政府が政府の財務諸表を改竄し、嘘の報告書をEUに出していたことから問題が起きています。なのに、ああなのに、ギリシャはEUを攻めるばかりで身を切る努力をしません。もうこうなったからにはギリシャをEUから離脱させ、世間の冷たい風に当たらすべきでしょう。日本は一体どうなる。こんなに世界一の借金をかかえながら、政府も官僚も自治体もメディアも、人ごとのように馬耳東風。困った日本国でもあります。
★今日の画像は、『広島電鉄・電車祭』です。広島市は全国で一番多く市内電車が走る街。広島電鉄が年に1回千田町の本社でお祭りを開きます。“鑁甜屐現役です。∈膿慧甜屐⊃轡哀蝓璽鵐燹璽弌次B臉掬甜屬留薪樟福ちびっこ運転手がかわいいです。こ垢鯀訛臉掬甜屐ヅ甜屬亮峺法Ρ深蠕福Д泪ぅロ電車に乗り、喜ぶちびっこ達。┿羃按交差点を走る電車。